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ビットコイン法定通貨化はトレンドになるか?+エルサルバドルの今

世界のビットコイン法定通貨化の実態

最近Twitterを眺めていたらエルサルバドルにおけるビットコイン法定通貨化にも一役買ったSamson Mow氏のこちらのTweetが流れてきました。

SamsonはもともとBlockstream(ビットコインのコアディベロッパーのひとりAdam Backの会社)の人でしたが、直近ビットコインの国家、自治体への採用を促進するためBlockstreamをやめています。
エルサルバドルにおけるビットコイン法定通貨化は2021年かなり話題になりましたが気付かない間にこんなに増えていたのか・・・?とびっくりして調べてみました。

スイス ルガーノ市

人口63,185人、面積75.93 km2のルガーノ市はイタリア人多めの美しい南スイスの都市です。ここでは2020年3月3日にビットコインを実質的に法定通貨化することを市長が発表しました。

ルガーノは美しい湖畔のリゾート地みたいです。こちらの方の訪問記にありました。

ルガーノ市はステーブルコイン発行体のテザー社とパートナーシップを結び、ビットコイン、テザー、ルガーノ市発行ポイントLVGAで税金の支払いができるようにするほか、公共料金の支払い含めたすべての支払いもこれらでできるようにすることを目指す。フォレッティ市長はスイスフランは引き続きルガーノ市、スイスの他のエリアで法定通貨だけどこれらは「事実上の」法定通貨化だ、と説明したようです。
テザー社は「ルガーノをブロックチェーンのハブにする」と発表しており、ファンドを作ってブロックチェーンのスタートアップ企業らを支援したり、大学や研究機関と協力してブロックチェーン教育もサポートしていく計画とのこと。ビットコインについてはトランザクションの処理能力を向上させるため、ライトニングネットワークの利用も予定するようです。

今年の10月にはテザー社と共催でBitcoin World Forumというイベントも企画されているらしく、いろんなブロックチェーンアプリケーションin自治体の事例が紹介されるなら面白そうでぜひ行きたいです。

ホンジュラス プロスペラ

ホンジュラスは人口990万人(世界92位)、面積112,090km2(世界100位)の中南米の国で、GDPは250億9000万ドル(世界102位)=1人あたり2,567.967ドル、公用語はスペイン語、法定通貨はレンピラ(米ドルとの交換レートは為替バンド制。毎週の中心相場から上下7%の変動を許容)の中南米の国です。エルサルバドルのお隣ですね。
この地図↓があった日本財団のサイトの解説によると、「ホンジュラスでは、人口の50%が貧困状況に置かれています。同じく中米のエルサルバドルでは20%、ニカラグアで25%、そして南米のボリビアでは40%、パラグアイで20%、コロンビアは35%と、貧困は中南米地域全体に蔓延する問題です。(出典:The World Bank「Poverty headcount ratio at national poverty lines (% of population) 2020年」)」という状況のようです。

日本財団による中南米の地図

もともとホンジュラス国家としてのビットコイン法定通貨化が噂されていたようですが、そうではなくホンジュラスのロアタン島の「プロスペラ」という経済特区においてビットコインを個人および企業の支払い手段(税金含む)として利用できるようになったことが2022年4月7日に判明しました。
加えて、ビットコインを含むその他の暗号資産での取引で得た利益は、キャピタルゲイン税の対象にはならないとのこと。

また「プロスペラ」は、ホンジュラスの自治体や海外企業等によるビットコイン建て債券の発行が可能になったことも併せて発表したのですが、、、後述するようにエルサルバドルの「ビットコインボンド」もまだ発行できていないのでここはちょっとどうなるか不明ですね。
経済特区での採用ということで、この場所に仮想通貨、ブロックチェーン関連企業を誘致したいという狙いなのでしょうか。

ポルトガル マデイラ島

2022年4月6-9日にマイアミで行われたイベントBitcoin 2022において、ポルトガルのマデイラ島(自治区)においてビットコインが法定通貨化されるのでは、という憶測がでたようですが、4月16日マデイラ政府はこれを否定しました。
この記事によるとカンファレンスにおいてホンジュラスのプロスペラの件の発表のあとでマデイラ政府の人物が講演を行ったことで混乱を招いたようです。
マデイラ島は「大西洋の真珠」と言われるくらい美しい島(かつクリスチアーノロナウドの故郷)らしく、これを見ても行きたさが募ります。これをいいわけに視察に行く機会がなくて残念。

マデイラ島にあるポルト・モニスの天然プール

ポルトガルは仮想通貨取引損益に関して課税ゼロだし、テックハブとしては国として魅力的だよ、ということではあり最近もこの業界の人がちょくちょく行っているのを見かけうらやましいです!

中央アフリカ共和国

中央アフリカ共和国は人口483万人(世界124位)、面積は622,984km2(世界43位)、GDPは23億8700万(推計)ドル(163位)一人当たり494.186(推計)、公用語はフランス語、サンゴ語、法定通貨はCFAフランの国です。

中央アフリカ共和国と周辺国 出典:旅行のとも、ZenTech

フランスの植民地でしたが1960年に独立、その後はクーデターが続くなど政情不安が続いており、世界で最も貧しい国の一つと言われています。
2022年4月27日にビットコインの法定通貨採用は、議会で全会一致で決定、国家としてビットコインを法定通貨に採用した2番目の事例となりました。

中央アフリカではインターネットに接続できる国民が人口の4%と言われており意義を疑問視する声もあります。
一方この記事によるとスマートフォンを持っている中央アフリカの人たちからはビットコインはスマートフォンで取引ができ、他の通貨への両替も簡単なことから、暮らしが便利になるという声もあるようです。
独立以降法定通貨となっているCFAフランについて植民地時代の遺物であり、フランスの経済的支配を続けさせるものだとして、廃止を求める声が高まっているという事情もこういった動きの背景にありそうですね。

パナマ

パナマは人口432万人(世界126位)、面積75,416km2(世界118位)、GDPは529億3800ドル(75位)=1人当たり 12,373.045ドル、公用語スペイン語、法定通貨バルボア(だけど使われてるのは米ドル。詳細後述)の中南米の国です。ちょうど南アメリカ大陸とのつなぎ目のところに位置しています。
こちらの4月28日のパナマ国民議会によるTweetはGoogle翻訳によると「暗号資産の商業化と使用、デジタルアセットの発行、貴金属やその他の商品のトークン化、支払いシステム、その他の規定を規定するプロジェクト法第697号は、第3回の討論で可決されました。」という内容で、このあと大統領が署名し法案が施行される予定のようです。

こちらの記事によると法律施行後は仮想通貨の決済利用が店舗だけではなく、税金や市区町村への支払いでも利用可能なり、現段階ではビットコイン、イーサリアム、XRP、ライトコイン、ステラ・ルーメンなどが対応銘柄に挙げられているようです。
また、パナマの法案はエルサルバドルのビットコイン法と違い、小売店が仮想通貨決済を受け入れるか選択できる権利があるとのこと。STOもできるようになるようですね。
21年より仮想通貨法案の採択を呼びかけてきたシルバ議員は同法案の施行により、パナマは「ラテンアメリカにおけるイノベーションハブになる」、金融包摂や雇用創出につながると語っているとのことです。
Wikipediaによると、パナマは中央銀行(パナマ国立銀行)は存在するが、紙幣発行権を持たず、米ドルにすべてを依拠し自国の通貨主権を放棄しています。流通している紙幣は米ドル紙幣のみ。自国通貨のバルボアは常に1バルボア=1米ドル固定。というような背景もあり、パナマはコスタリカと共に中米で最も経済的に進んだ国であり、伝統的に金融業が経済の中心で人口の7割が第三次産業に従事しているとのことです。

出稼ぎの人が多いエルサルバドルとはちょっと事情が違って、第三次産業に従事していない残り3割の人の金融包摂を目指す、仮想通貨産業の振興を目指す、というような目的なのでしょうか。

エルサルバドルの2022年これまで


2021年のエルサルバドルビットコイン法定通貨化後の動きは以前noteにまとめましたが、2022年はほとんど動きがありません。ビットコインファンドで利確した資金で建てた動物病院Chivo Petsが2月26日に稼働し始めたくらいでしょうか。

2021年にBitcoin City構想およびBitcoin Bondの発表をしてからブケレ大統領が「Buy the Dip」と言いながらビットコインを買うことも2022年には見られていません。
Bitcoin Bondもウクライナ情勢に端を発する不安定な市場を原因に発行を延期する、と発表しています。
また、3月25-27日にはエルサルバドルで市民87人が殺害される事態が発生し、これを受けてブケレ大統領は令状なしで逮捕が可能となる非常事態を宣言、登壇予定だったマイアミのBitcoin2022行きもキャンセルしています。
わたしはブケレ大統領のTwitterをフォローしているのですが、4月以降は毎日逮捕されたギャング(刺青がめちゃくちゃ入った人たち)の写真があげられていて今はビットコインどころではないんだろうな、ということが推察されます。

ビットコインが法定通貨になって皆がビットコインを使うようになって便利になったか、というと現時点ではそういうわけではないようです。日本からフルグルベンチャーズの練木さん、Nayutaの栗元さん、MissBitcoinのマイちゃんなどがエルサルバドルを訪問して現地の実態を伝えてくれるのはほんとに超有益情報だなと思います。
こちら↓が練木さんの体験記

こちら↓がマイちゃんの現地レポート

お二人のレポートを読むと一般に普及したとはまだまだ言えない、店舗で使えるところは10%以下、Chivoのユーザビリティは低い、という状況のようですが、まだ始まったばかりだからね、ということで今後に期待したいです。

(おまけ)アメリカにおけるLightning決済

2021年前半から、コロナ禍を受けた金融緩和の中、デジタルゴールドとして特にアメリカでビットコインが注目された結果、現在アメリカ国民のビットコイン保有率は26%、およそ4,000万人がビットコインを保有していると言われています。
Robinhood、CashAppなどでLightning対応が行われており、また、前述のマイアミでのBitcoin2022ではStrike CEOのJack Mallersが大手PoSシステムとの連携を発表し、マック、ウォルマートなどなどいろんな店舗でLightning決済が使えるようになるぜ!という発表をしました。(この人の発表毎回思うけどロックスターみたいですよね)

LN決済は金融包摂文脈でエルサルバドルのような国で最初に発展するのかなと思っていましたが、意外とアメリカでがんがん使われだすのかもしれません・・・!こちらも楽しみです。


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