NFT・暗号資産の所有権
私は弁護士ではないので、法的な見解については正確ではない可能性があります。私が思うことについて所見を述べます。正確な法的見解は必ず弁護士に確認してください。
今回は、楠さんのツイートがきかっけとなりました。
私が「楠さんが正しい」とコメントしたのに対して楠さんのどの部分が正しいのかとのツイートをもらったので詳細をNoteにしました。
元の書籍を読んでないので、楠さんの主張は書籍に忠実であるという前提においてコメントします。
ブロックチェーンの文脈で「所有権」を語るのは慎重に
教科書を書くときには「所有」という言葉は慎重に使ったほうが良いです。民法上の所有権と解釈されるとNFTは有体物ではないので所有権はないとすぐに反論されます。
NFTは一般用語としての「所有感」はあると思うのですが、ユーザーはOpenseaに預けたNFTについては「債権」を保有していると思います。NFT引出請求権を持っています。
同様に取引所に預けた暗号資産も、顧客は預かり資産の引出請求権を持っています。この権利を行使しても、(十分な時間をおいても)取引所が顧客に引き出しをさせないと債務不履行です。
では、ノンカストディアルウォレット等で自分で管理しているNFTには何の権利があるかというと、それはOpenSeaのご利用規約や、運営側が決めて譲渡した権利を保有していると考えられます。「著作権譲渡」「利用承諾」されてるのか曖昧なので揉める原因かと。そしてその他の権利も多数あり、明示的に書いてないなら、「お金は払ったけど、何の権利も譲渡されてない」と解釈すべきです。まあ、著作者に許可なく閲覧して第三者に表示する権利くらいはあると思いますが。
ノンカストディアルウォレット等で保管されたビットコインは「物権」なのか「債権」なのかというと、どちらでも無いと思います。物権は有体物である必要があるし、債権は相手が必要です。
でも何も無いから盗んで良いとはなりません。電子的に価値があるものを盗んだ場合は、だいたい「私電磁的記録不正作出罪」で逮捕されます。刑法の概念と民法上の概念は異なります。
楠さんの主張に対する意見・解説
→法的にはその通りだと思います。
→「第三者対抗要件さえ難しい」電磁的記録は法的には登記していないですね。暗号資産/NFTの譲渡が債権譲渡だと解釈したときに、ブロックチェーンに譲渡記録が記載されているので「公信力」を持ったと解釈されるかどうかの議論ですね。
公信力があるなら、第三者対抗要件(売り手が暗号資産を二重譲渡したときに、善意の第三者が取得しても無効になる)と解釈されると思うのですが、ブロックチェーンの公信力については判例もなく不明な状況です。
→WBTCはEthereumで動きます。楠さんのいうInteroperabilityはプロトコルレベルの互換性だと思うので、そうだとするとその通りかと。
→Bankの定義の違いかと。Bankを「お金的なものを扱ってるなにか」と広く定義するのであれば(ソフトバンクのように)、成立するかもしれませんが、今のところはBanking as a ServiceのBankingは市中銀行(普通の銀行)を指すのが一般的です。
→「窃盗には該当しない」は電磁的記録が有体物ではないので成立します。しかし、「犯罪に該当しない」は成立しません。
→私電磁的記録不正作出罪で逮捕されるのが定番です。MtGoxもこれでした。
若手へのアドバイス
僕から若手へのアドバイスですが、「インターネット」や「web」の歴史や概念を理解せずに勝手にweb3の文脈で上書きするのは危険です。インターネットの諸先輩方に攻撃されます。(笑)
僕はweb3がいう「プロトコル」の定義が従来と違うので、プロトコル警察として頑張っていますが、数の論理には勝てないのでもう負けを認めざるを得ないかなと思ってます。(笑)
web3は「インターネット」については、何も変革をもたらしていません。インターネットとweb3はレイヤーが違います。百歩譲って「インターネット」を広く解釈して、「PCやスマホで起こる出来事の全て」と解釈するとweb3が包含されますが、教科書的な本でそのような解釈をする場合は、そのように明記すべきです。
僕もそうですが、インターネットの時代を生きてきて、(僕は作ってませんが)作ってきたという自負があるのですよ。先人たちの相当な苦労と努力の結果の上に今のインターネットの便利な世界が存在しています。
若手の皆様はインターネットが存在するのが当たり前のように思うのかもしれませんが、過去の偉業の上にweb3が存在することを忘れないようにするのが良いかと思います。
web3リサーチ2023
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