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Lightning Networkの可能性とこれから

暗号資産を使ったマイクロペイメント

 突然ですが、みなさまが暗号資産に興味を持ったきっかけはなんですか?最近だと「デジタルゴールド」とか、「裁定機会が超残存してるHigh volアセット」とか「DeFi」とか投資対象の1つとしての見方の方が主流なのかもしれませんが、わたしは断然マイクロペイメント(少額支払い)です。

2015年に、それまで聞いたことはあるくらいだったビットコインについて調べてみて大興奮しbitFlyerにアカウントを開設し、使えるところを探した結果、Wikipediaに寄付ができる!ということを知り、US$3(300円くらい)をQRコード読み込んで寄付しました。
(※今はWikimedia foundationへの仮想通貨での寄付はbitpay経由で、寄付する人の住所などを入れてから仮想通貨(BTC、ETH、BCH、XRP)を送る仕様になっています。)

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銀行で海外送金すると3,000-4,000円程度手数料がかかるので300円を海外送金することなんてこれまでには自分の中に取り得る行動として存在しなかったのです。国外に少額を一瞬で、超安い手数料で送金できた、という目の前の事象に衝撃を受けたのを覚えています。この技術があれば今までできなかったいろんなビジネスができるようになるのでは・・・とわくわくした人は多かったはずです。

しかしこのあと、「ビットコインの送金」には2つの越えないとといけない課題が立ちはだかります。
1つ目がスケーラビリティの問題です。ビットコインは仕組み上、1秒間で処理できる取引件数(この場合は送金件数ですね)は7件程度が上限です。わたしは仮想通貨交換業者で働いているので、「ブロックが詰まって送金手数料が上がる」という現象を何度も見てきました。こうなるとUS$3送るのにも銀行手数料の数千円以上(ひどい時はもっと)かかります。
この問題を技術的に解決しようとしたのがLightning Networkです。

Lightning Networkとは何か?(超ざっくり)

Lightning Networkとは何か?技術的な詳細は今Mastering Bitcoin、Mastering Ethereum のアンドレアスさんがMastering Lightning Networkを書いてくれているみたいなので、それを待つとして(日本語訳は今回も今井さん&鳩貝さんの黄金コンビがやってくれるに違いない)、すごくざっくり言うと、「ビットコインは「ほふり」に預けておいてDatabaseの書き換えで送金を記録しましょう!」みたいなことです。2016年にNayutaの方が書かれた記事が分かり易かったので貼っておきます。

実はbitFlyerにも「bitWire」という少し似た機能があります。bitFlyerのユーザー同士で、メールアドレスかbFIDで送り先を特定してビットコインを送る、というものです。単純化のため仮にbitFlyerのユーザーが2名で、Aさんから4BTC、Bさんから1BTCをbitFlyerが管理するのお客様用ウォレット(お財布)で預かっている状態だったとします。AさんからBさんに1BTCを送る時、お客様用ウォレットの総量は変わらず5BTCなので、ウォレット内で実際にマイナーに手数料を払って移動させなくてもbitFlyerが管理している帳簿上でAさんの残高を4BTC→3BTC、Bさんの残高を1BTC→2BTCに変えてあげればよいですね。これだと、マイナーにブロックに記録してもらう必要がないので、一瞬で送金が完了し、手数料もbitFlyerに払うものだけになる=すごく安くすみます。
「bitWire」はbitFlyer内の機能ですが、他の取引所と共同してどこかにビットコインを貯めておく機関を作って、そのビットコインの量の範囲内でBTCをやりとりするのであればデータベースで管理すればいいね、というような考えた方です。(ものすごくざっくり)

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Lightning NetworkのPaymentで現時点でできること

さて2020年5月になり、わたしは猛烈にLightning Networkが気になり始めました。このPollo Feedというサイトを見つけたからです。
このサイトではLightning Network上のウォレットで10円相当のビットコインを支払うことで、画面上に中継されている米国ニューイングランド州にいるニワトリ3匹にご飯をあげることができます。

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なんとしてでもこのニワトリたちにLightning Networkを使ってご飯があげたい・・・!と思い、色々調べてLNウォレット(Lightning Network上のウォレットのこと)を作成しました。そしてついに、PolloFeedのQRコードを読み取り一瞬で送金が確認されエサが落ちていきニワトリが食べてくれたときの感動・・!!言葉では言い表せませんでした。

また、最近だとBITCOIN STREET ARTというプロジェクトがあることも知りました。これは街中に「ビットコインの格言」18個をそれぞれステッカー化したものを貼り、その風景+写真をプロジェクト運営者に送ることで報酬US$0.06(6円程度)をもらう、というものです。ドイツで始まったプロジェクトらしく、まだ日本の写真はポストされていなかったのでこれは!と思いステッカーを印刷し、会社帰りの道の木に貼って写真を撮りました。(もちろんすぐ剥がしました。こちら↓のオフィスに貼った写真は "STREET ART"じゃないので受け付けてもらえませんでした)そしてサイト上でゲットした報酬を自分のLNウォレットに移動!

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・・・したところで、このプロジェクトの人から、「日本でももっとこのプロジェクトを広めてほしい。説明動画を作ったのでこれに入れることができる日本語の音声を録音してくれないか」というお問い合わせを頂いたのです。

はいもちろん!と言いたかったのですが、このプロジェクトは先述した「ビットコインの送金」が越えないとといけない2つの課題のうちのもう1つの観点で難しそうだな、と思い調べてみました。

資金決済法におけるカストディ業務

「ビットコインの送金」が越えないとといけない2つの課題のうち、もう1つというのはAMLCFT(マネーローンダリング/テロ資金供与対策)の観点です。
「○○の犯罪の資金に仮想通貨が使われた」というニュースは残念ながら今日でもよく耳にします。わたしが2015年にWikimedia foundationに送ったのはUS$3でしたが、同様に数十億、数百億円相当を一瞬で世界中のどこにでも送れることも事実で、この機能の悪用を全世界で協調して防ぐことが今の業界の一番の課題です。
(注:念のため、仮想通貨が現金より犯罪に使われやすい、ということではなく、仮想通貨の性質のうち規制で対応しないと悪用されるものがある、ということだと理解しています)
現状は日本や米国、欧州諸国など規制がある地域では口座開設前に暗号資産交換業者がユーザーの本人確認を行うことが求められていますが、これに加えて、FATFのトラベルルール(送金者と受取人の情報を収集して正確性も確認すること)をどう実務に落とすかが各国で議論されているところです。日本では資金決済法、内閣府令、各種ガイドラインなどでこの辺りのルールが定められています。

2017年の資金決済法施行以降、お客様の暗号資産を預かる&受け取る&送る、だけのいわゆる「ウォレットサービス」は日本では「仮想通貨交換業」と見なされていませんでしたが、2020年5月に改正資金決済法が施行され、暗号資産を「預かる」カストディ業務も資金決済法下の業務となり「暗号資産取引業者」としての登録が必要になりました。つまりウォレットサービス提供者も業登録し、お客様の本人確認をする必要が出てきたのです。
小笠原先生の記事はわかりやすいので、少し抜粋させていただくと、、、

金融庁内閣府令等パブコメによれば、「事業者が利用者の暗号資産を移転するために必要な秘密鍵を一切保有していない場合には、当該事業者は、主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態にないと考えられますので、基本的には、…「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられます。」(金融庁内閣府令等パブコメNo9)とされています。
 また、「事業者が利用者の暗号資産を移転するために必要な秘密鍵の一部を保有するにとどまり、事業者の保有する秘密鍵のみでは利用者の暗号資産を移転することができない場合」や「事業者が暗号資産を移転することができ得る数の秘密鍵を保有する場合であっても、その保有する秘密鍵が暗号化されており、事業者は当該暗号化された秘密鍵を復号するために必要な情報を保有していないなど、当該事業者の保有する秘密鍵のみでは利用者の暗号資産を移転することができない場合」(金融庁内閣府令等パブコメNo11~12)は、他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられるとされています。
 したがって、事業者が、秘密鍵を保有していない、マルチシグの一部しか保有してしない等のため、暗号資産を移転できない場合には、本規定に該当せず、暗号資産交換業に該当しないと考えられます。

ということで、ユーザーが秘密鍵の全てまたは一部を管理するウォレット(「ノン・カストディアルウォレット」と呼ばれるものですね)であれば、そのウォレットを提供している会社は暗号資産交換業に該当しない、ということのようです。(この点AMTの長瀬先生からもアドバイスいただきました。ありがとうございました!)

先程のニワトリとステッカーの件に照らすと、

🐓ニワトリにご飯をあげるのは、ビットコインを送る側が登録交換業者が提供するLNウォレットを使う、またはノン・カストディアルタイプのLNウォレットを使えば問題ない
🐓ステッカーの件はステッカーの写真をアップロードして報酬をもらえるサイトから自分のLNウォレットに転送できるものの、当該サイトが「秘密鍵を全て持っている」状態だと思われ、日本居住者が利用する場合は当該サイトが「暗号資産交換業」に該当し業登録が必要

ということかと思われます。
なので、残念ですが、ステッカープロジェクトの日本語音声の録音はお断りしました。
ニワトリの件も問題ないと書いたものの、登録交換業者が提供するLNウォレット、というのは現時点(2020年7月時点)で存在していないし、ノン・カストディアルタイプのLNウォレットを作るのは、Lightning Network上にnodeを立てて、というところからやらないといけないので仮想通貨に超詳しい人でないとハードルが高い、というかほぼ無理です。

Lightning Networkのこれから?

クロスボーダーのLow Feeのマイクロペイメントにどれだけのニーズがあるのか、そしてビジネスになるのかというのはよく言われる疑問ですが、わたしは両方の質問に対してポジティブな意見を持っています。
例えばオーストラリアのやけどしたコアラにこれで募金できたら、とか、ネットで見かけた作品に対するチップをこれで払えるようになったら、とか、ちょっとしたお手伝いを世界中に発注できるようになったら、とか、すごく原始的な発想ではありますが夢は広がります。
色々触ってみた感想として、各国の登録業者がLNウォレットも対応する、ウォレット業者がKYCを交換業者に依拠する、送金の金額制限を設定する、BTCの引き出しを制限する、などやりようはあるのではないかと思っています。
個人がノン・カストディアルウォレットを持つ、というのは現時点では難しすぎますが、Nayutaなどがこれにトライしていることも知っており、この分野にも期待です。
この技術が育っていく上では、AMLCFTの観点で問題がない形にすることが何より大切だと感じています。逆に言うと現状ではLightning Networkは規制の抜け穴にもなりえてしまうので、協会等でも取り扱いを検討すべき事項ではないかと思います。まずはJBAで部会やるとかどうでしょうか。

ビットコイナー反省会でもライトニングネットワーク特集があったのですね。この回は聞いてなかったのですがこの記事も面白いです。

この業界にいるとこういった新しい世界を作れる可能性のある技術革新と規制対応に常にキャッチアップして考えていかないといけないのですが、これもまた楽しいです。LNの世界のますますの発展に期待し、わたしも何らかの形で貢献できたらいいなと思います。

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bitFlyer Blockchain PR/IP担当取締役。bitFlyerではHead of Treasury。 趣味は経済学と数学の高まる本を読むことと世界中のかわいい女の子を鑑賞すること。最近はメカニズムデザインやマッチング理論とブロックチェーンの関係を妄想するのが好き。

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